【特集】本当に、テレワークしてみたい?

【特集】本当に、テレワークしてみたい?

【特集】本当に、テレワークしてみたい?

「テレワーク経験者4% 政府推進も浸透せず」と、今朝(2018年8月16日)の神戸新聞で記事になっていました。

これは、人材サービス会社 エン・ジャパン(東京)が4~5月に転職支援サイトの利用者に実施・調査分析した結果をプレス公開していたものを、共同通信が配信したものです。
このエン・ジャパンさんの調査では、20歳以上の男女計8,341人が回答しているため、調査の規模としては他の調査と比べても大きなもので、参考になる調査だったと思います。
関心のある方は、詳細については、同社の報告(8,000名の社会人に聞く「テレワーク」実態調査 2018年6月)をご覧ください。

 

さて、今回から非正規ドットコムでは、特集として、この「テレワーク」について書いていくことにしました。

政府のテレワーク推進について
さまざま先行調査や事例などを踏まえても、随分、日本の労働者の気持ちとズレていませんか!?

この特集をはじめるにあたって、今の時点での所見です。これが特集記事にしていこうと考えた動機です。

 

「テレワーク」に関しての厚生労働省の動き

そこで、少しここ最近の「テレワーク」に関しての政府の動きを整理しておきます。

まず「テレワーク」については、昨年2017年10月3日に、厚生労働省の労働基準局が実施する検討会等として「柔軟な働き方に関する検討会」(座長:松村茂 東北芸術工科大学教授)が設置されていました。
2017(平成29)年12月までの間に6回開催され、①雇用型テレワーク、②自営型(非雇用型)テレワーク、③副業・兼業といった柔軟な働き方について、その実態や課題の把握及びガイドラインの策定等に向けた検討が行われていました。
この検討会の報告書は、昨年2017年12月25日に、厚生労働省の労働基準局 労働関係法課(副業・兼業)と雇用環境・均等局 在宅労働課(テレワーク)の両者からの公表とされています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000189535.html

 

「柔軟な働き方に関する検討会」

さて、この検討会の審議経過を簡単にご紹介します。

この検討会は、民法や労働法を専門とする学者や弁護士、また業界の関係者などの有識者のみで構成された検討会でした。
①雇用型テレワーク、②自営型(非雇用型)テレワーク、③副業・兼業といった柔軟な働き方について、その実態や課題の把握及びガイドラインの策定等に向けた検討会でした。

第2回など一部非公開になっている部分もありますが、原則公開されています。後日議事資料も議事録もほぼ公開されております。

検討会では、他社で働きながら副業の仕事を持ちたい人を使用も行うと発表し話題となった、ソフトウエア開発のサイボウズ(東京)など、企業からのプレゼン・ヒアリングなども行ったり、労使4団体(連合・経団連・日商・全国中央会)からの意見聴取も行った上での検討会にはなっています。
しかし、委員構成として、最初から推進メンバーを多く集め、審議というより、軽く意見を求めた程度の内容。まさに、こっそりと、しかも、短時間のうちに集結させたなという印象が濃い研究会でした。

 

開催方法など違和感ありの検討会

ちなみに、この研究会というのは、法改正を念頭においたいわゆる労政審(労働政策審議会)のように重いものではなく、今回のように通達でガイドラインを改正する程度で足りる時などに行われている私的諮問機関です。
今回の検討会では、開催設置要綱を作り、厚生労働省労働基準局長及び雇用環境・均等局長が有識者の参集を求めて開催。

要するに、最初から通達程度の改正をするために、しっかりと議論を加えて行うという体裁にはなっていないものだったと言わざるを得ません。

この検討会の審議過程を振り返ってみると、法的未整備の事項がまだ多く残されている、いわゆる「柔軟な働き方」についての課題に対して、いたずらに「テレワーク」の普及をはかろうとする政府の姿勢が見え隠れてしています。大変違和感を覚えるものでした。

この後、最終的には、通達でガイドラインをしっかり改正しているのですが、記憶に新しいところで、「働き方改革関連法案」の審議が国会がはじまり、裁量労働を巡る厚生労働省の調査結果に異常値が多発している問題を受け、裁量労働制の対象拡大に関わる部分を削除する方針を決めたのは、この後、年が明けての2月末でした。

 

 

「裁量労働制の対象拡大」は全面撤回したはずなのに

検討会は、2017年12月までで終了し、報告書は、12月25日に公表されています。
そして、検討会の報告書では、冒頭で「テレワーク」を、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり、子育て、介護と仕事の両立手段となるとともに、ワークライフバランスに資することができ、多様な人材の能力発揮が可能となるとしました。

 本当に育児・介護やワークライフバランスに資するもの?


実は、報告書では、続く文脈で、「雇用型テレワークについては長時間労働につながるおそれがあるとの指摘や、自営型テレワークについては注文者や仲介事業者との間で様々なトラブルに直面しているとの指摘等もあったが、これらに留意しつつ、その普及促進や就業環境整備を図ることが重要であるとしました。

ワークライフバランスとは逆行する危険性なども、ちゃんと加えているではないですか!?

そして・・・

 ブラックキーワード その1 「働き方改革実行計画」の登場


働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)に基づき、本検討会において議論の結果、以下の対応が必要であると、報告書で結論付け、

① 「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の改定
② 「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」制定
(「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を改正した上での名称変更)
③ 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」策定と厚生労働省モデル就業規則の改定

以上、大きく3点、項目にすると4つの改定が、「働き方改革実行計画」というキーワードのもと、いとも簡単に改定されてしまいました。

 ブラックキーワード その2 「裁量労働制」もしっかり登場!


検討会の審議過程を詳細に追っていただくと、わかっていただけるかと思うのですが、この検討会でも、実はこの後問題になった「裁量労働制」という言葉が、しっかり裏のキーワードになっていたことに気付くかと思います。

雇用型テレワークについては、現行の「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」というガイドラインを改正し、在宅勤務だけではなく事業場外勤務全般を対象とするものに改めるとしています。

具体的には、使用者による適正な労働時間管理の責務や、いわゆる「中抜け時間移動時間の取り扱い」にも触れています。
また、サテライトオフィス勤務も事業場外労働の一態様としており、テレワークにおける事業場外みなし労働時間制の適用は行ってよいという考えを改めて示してしまいました。

テレワークにより、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときは、労働基準法第38条の2で規定する事業場外労働のみなし労働時間制(以下「事業場外みなし労働時間制」という。)が適用される。

(引用) 報告書8ページ イ 労働時間制度の適用と留意点 (イ)事業場外みなし労働時間制

この部分は、より厳格であるべきでところではないでしょうか?
なぜなら、在宅勤務を含め、使用者による適切な労働時間管理が不可欠であると考えるからです。

 法規制とガイドラインの違う!


法規制を行うのではなく、あくまでガイドラインという法規制の及ばないものでは、労働者の保護にはなりません
行政からの救済ではなく、司法救済を待つしかないからです。現実的ではありません。
同様の危惧する発言は、検討会でもメンバーから出されていました。

 

在宅労働課長補佐 現段階ではどうしても、法律に基づかないで、あくまでこうあるのが望ましいという姿を示すガイドラインとなりますので、強制的な効力だったりとか、指導権限というのは、おっしゃるとおり、ないということになってしまいます。

ただ、一定程度、望ましい姿を示すことによって、それを当事者が守ってくれたりとか、そういうことを期待してのものになりますので、周知という意味で効力が生じるものになるのかなというところです。

委員 あくまでも、自主的に守ってくれる人に対してということですね。ありがとうございます。

(引用) 第3回「柔軟な働き方に関する検討会」(2017年11月6日)

 ガイドラインが策定されても労働者は保護できない!


最近の厚生労働行政は、問題が顕在化してきたら、後追い型で、まずはガイドラインというものを作っておき、それで、お茶を濁しておくというような例は多々見受けられます。

今回もまさにその代表例で、トラブルは続出するが、結局のところ、あとで労働者が、たらい回しにされた上で、泣き寝入りするしかないという事例が増えてくるのだろうと予想されます。

在宅労働課長補佐 例えば相談先の御紹介だったりとか、そういうことはできようかと思うのですが、ただ、指導権限があるかというところで言いますと、やはりどうしても法律に基づくガイドラインではない部分ですので、指導権限などはないというところになります。

委員 その場合の相談先はどこですか。

在宅労働課長補佐 ものによるのだと思うのですが、例えば法テラスさんだったりということもあろうかと思います。

委員 自分で救済するということですね。その場合、ガイドラインを破った発注先などに関して、行政指導をするということは想定されないわけですよね。

在宅労働課長補佐 指導権限がないということでは、そうなってしまいます。

(引用) 第3回「柔軟な働き方に関する検討会」(2017年11月6日)

 だから、ルールと環境整備が先では!?


働く者の希望に応じた働き方の実現は、誰もが安定的かつ公正な処遇のもとで、働くことが可能なルール・環境が整備されていることが前提であるべきです。

今回のガイドライン改正では、「柔軟な働き方」の名のもとに、長時間労働や使用者責任逃れなど、就労者保護の観点から問題となる行為が助長されるかもしれません。
雇用関係はもとより、請負や委任などの形態で働く者を含むすべての働く者が安心して健やかに働くことができる社会基盤の構築していくことこそが望まれているのではないでしょうか。


 

最後に

長くなりました。第1回目はこのあたりでとどめておきます。
次回からは、今回紹介した、この検討会の審議過程をもう少し掘り下げると同時に、今日取り上げていない、「自営型テレワーク」や「兼業・副業」の分についても、触れていければと考えております。

「非正規ドットコム」としては、この「テレワーク」というテーマについて、相当時間をかけて、追跡調査観測もしていき、この労働者のズレを少しでも解消していくことが必要だという認識です。
今年度からは、ワークルール教育を推進していこうとしていた中で、その為には、どのような方策があるのか、非正規ドットコムのTwitte(@hiseki_com)や新たなSNSなども活用しながら、いろいろ知恵を絞っていく中で、皆様のお知恵やご意見・ご感想を頂けばなと感じております。どうぞよろしくお願いいたします。

(文) 非正規ドットコム:「テレワーク」研究会

非正規ドットコム

非正規ドットコムは、連合兵庫が、2008年「非正規労働センター」を発足させ、情報発信事業を中心に、独自のホームページ「非正規ドットコム」を立ち上げました。一般財団兵庫勤労福祉センターがその運営管理を行っております。 非正規雇用で働く人々に関連する法律解説のページなどを設けてきましたが、これからはさらに、SNSの活用等を図り、情報提供の充実を図っていきます。